KAT-TUNの歌から「俺」が消えた日【KAT-TUN楽曲一人称調査】
とうとうはてなブログを立ててしまったじゃないか!
はじめましての方も改めましての方も、こんにちは、るつと申します。
さて今回なぜ私が、今日ジャニオタの間で静かにブームとなっている(体感)はてなブログに手を出したのかと言いますと、Twitterで相互フォローさせて頂いておりますちゃっぴさんのKAT-TUN楽曲頻出単語調査にひどく刺激されたからであります。
ちなみに私は先月、カウコンで一目惚れならぬ一聴き惚れした『Polaris』について、そして<KAT-TUNっぽさ>とは一体何であるかを考える記事をレポート口調で気持ち悪いほどPrivatterに書き殴った前科があります。
特に最近はKAT-TUN楽曲の作詞家さんで今イワツボコーダイ氏とFOREST YOUNG氏がアツいんだよ!! と事あるごとに呟いております。そろそろフォロワーの皆さんにドン引きされてるんじゃないか私。心配。
光の速さでちゃっぴさんの歌詞分析に食いついた私は、結果発表前にこんなことを呑気に呟いていました。
カツン楽曲に使われてるフレーズで「光」と「影」だったらどちらの方が多いのかなあ。「俺」と「僕」だったら俺の方が多そうだけど、どういう比率になるのかも気になる。
— るつ (@322rutsu) May 18, 2015
そしていざ結果発表。溢れ返る言葉たちの中から「俺」と「僕」を真っ先に探し出した私は驚愕することとなります。
「僕(212)>俺(110)」
…
僕(212)>俺(110)?!?!?
そんな差つく?!?! ダブルスコア?!?!?
衝撃だった。
俺らが明かりを灯すから~♪とか歌ってたじゃないか。ちゃんと俺がいるから~♪とも歌ってたじゃないか。挙句の果てには『俺俺』なんて映画の主題歌も担当していたじゃないか。
確かに近頃は一人称僕の大人っぽい楽曲も増えてきた。けれども彼らが「KAT-TUNっぽい楽曲になったんじゃないかな」といって激しくてカッコいい曲を提供してくることだって勿論多い。そういった曲の中にはきっと「俺」の一つや二つ含まれて……あれ? もしかしてそういうわけでも無かった?
いやもしかしたらKAT-TUNは昔から意外と一人称「僕」の曲をコンスタントに貯蓄していて、近年緩やかに一人称が「俺」の楽曲が減っていったという予想も立てられるのではないか。
日本語の一人称とは不思議なもので、「僕」と「俺」で受ける印象はまるで異なります。記憶に新しいのは3月17日放送のKAT-TUNのがつーん。この日の放送では「自分のことを自分の名前で呼ぶ女の子はあり? なし?」という話題が取り上げられた際に我らが中丸くんが以下のような発言を残しています。
中丸「実家にいる時さ、自分のことさ、何て呼ぶかさ、すっげー悩まない? 俺ここ何年も悩んでるんだけど」
田口「俺は『俺』だわ」
中丸「俺すごくねー、悩んでんだ。(中略)小学生くらいの時に『僕』ってなったのかな」
田口「へー。『僕』っていうのは外に出てっても?」
中丸「友達と会う時は『俺』ってなるけど。家にいる時は『僕』になる。で、今度だんだん大人になってさ、家で『俺』って言いたくなる時期もあったと思うんだよ。でもちょっと抵抗があって。それで今もう何年も実家にいる時は『俺』なのか『僕』なのか……(迷っている)」
中略内では小学校に上がる前に中丸くんが自分のことを「お兄ちゃん」と呼んでいたというご飯3合は食べられる美味しいエピソードが紹介されましたが泣く泣く省略しました。ご了承下さい。
また、「俺」が常用漢字として認められたのは2010年。つい最近のことです。常用漢字になるということは学校で教える漢字になるということ。「俺」については認定前に「子供に教えるべき漢字なのか?」とかなり議論になっていたそうです。
「僕」よりも「俺」の方がラフで、乱暴までは行かずとも「僕」の方がやっぱり上品。そんな印象が日本独自の共通認識なのでしょうか。そしてKAT-TUNというグループのパブリックイメージがどちらかと問われればファンの方でもそうでない方でも「俺」と答える人の方が多いんじゃないかなと推測します。となるとこの分析結果、実はかなり掘り下げ甲斐のあるテーマなのでは? と思い至った次第です。
思い立ったが吉日。ならば掘り下げてみようじゃないか。
KAT-TUNの楽曲における一人称の変動について、調査してみました。
1.調査を始めるにあたって
- 調査対象:2014年末までにKAT-TUNの楽曲としてシングルもしくはアルバムに収録され、かつ公式な歌詞が公開されているもの(ソロ・デュエット曲は除外)
- 歌詞は原則として「歌詞検索サービス 歌ネット」を参照。
- 楽曲内において一人称が「俺」で統一されているものを俺系楽曲、「僕」で統一されているものを僕系楽曲としてラベリング。(一つでも「俺」または「僕」が入っていればOK。ただし一人称が混合しているものは除外)
- 一人称複数(「俺達」「僕たち」)や「オレ」等もOK。
- Rap詞のみに「俺」を含む場合も俺系楽曲としてカウント。ただしラベリングの際は俺系楽曲として区別できるようにする。
- 楽曲は音源化された年ごとに集計。その年に音源化された楽曲総数で割ることで、その年の楽曲中何%が俺系楽曲・僕系楽曲で占められているかをグラフ化し、その傾向について分析を試みることとする。
2.調査開始
- 2006年
ラベリングした楽曲の後ろにあるカッコ書きは一人称の使用例です。
前年の連続ドラマ『ごくせん2』のブレイクをきっかけに新規ファンを多く獲得(私もその中の一人です)。黒くてギラギラした衣装、ロック色の強い楽曲が持ち味、不良っぽい、なんか怖い。従来のアイドル・ジャニーズ像をぶち壊した衝撃は今でもよく覚えている方が多いのではないのでしょうか。
この頃のKAT-TUNは特に、いかにも「僕」とは言わなそうだな…と思いながらのラベリング作業。 今でも人気の高いネバアゲやGOLDで「俺」は使われてなかったんですね。しかしながら全体の40%は俺系楽曲という結果になりました。
また、3rdシングルの『僕らの街で』は赤西くんの留学があったため5人体制でのリリースとなっております。シングルには必ず俺系楽曲が入るといったところでしょうか。
- 2007年
2ndアルバムは引き続き5人体制のままリリース。4thシングル『喜びの歌』より6人体制に戻ります。
2ndアルバムはちょっと特殊で、初回限定盤は2枚のディスクに分かれており、フリーズ~ピスフルは全てデビュー前の楽曲となります。あれ? 意外と青いぞ?
『Movin'on』はRap詞のみに「俺」が登場します。
※1「そうさ僕達は」から『FIGHT ALL NIGHT』は僕系楽曲としたいところですが「(Rap詞)俺の胸にある」があるので一人称混合楽曲となり除外。
※2「ちゃんと俺がいるから」から『喜びの歌』は俺系楽曲としたいところですが「(Rap詞)僕らの街で君と待つ列車」があるので一人称混合楽曲となり除外。
デビュー2年目にして私は悟りました。この手作業思ったより大変だぞ。
4thシングルのキプフェはカップリング含めて真っ赤でお見事。
- 2008年
デビュー前以来の海賊をモチーフにした3rdアルバムが印象的だった2008年。この頃の高貴な衣装、ドンチューの凝ったPVは今でもよく懐古されている方が多い気がします。*1
前年に引き続き頑なにカップリング曲は「俺」を貫き、また3rdアルバムの初回盤のみに入っている楽曲も合わさって2006年越えの俺系楽曲率。
※3「僕に唄い続けた君の全て」から『MOTHER/FATHER』は僕系楽曲としたいところですが「(Rap詞)私達はすぐ傍で見てる」「(Rap詞)俺は俺なりに伝えるぜ絆」があるので一人称混同楽曲となり除外。
三種類の一人称が存在するマザファザ。
余談ですが二人称は君、Rap詞にはあなたが登場します。人称のごった煮。
- 2009年
?!
前年度の俺系楽曲50%達成が幻だったかのような結果です。
なんと2009年、KAT-TUNは一度も「俺」を歌っていなかったのです。念の為言っておきますが、この頃のKAT-TUNは6人です。
4thアルバムに収録された『White X'mas(Album Version)』はRap詞が追加されたという点でシングルver.と異なりますが、そのRap詞の中にも一人称は見当たらなかったのでカウントしていません。また、『MOON』は一人称が「私」で統一されていたので私系楽曲としてラベリングしました。
2009年というと年長の中丸くん・上田くんが26歳、次に年上だった赤西くんが25歳を迎えて、ちょうどKAT-TUNの半分が20代を折り返す年に当たりますね。だからといって「俺」を控えて「僕」に転換したのか? と言うのも微妙なところです。
楽曲の75%で一人称の消失が発生しているのはちょっとポイントかもしれません。
- 2010年
赤西くんの脱退に伴い、『Going!』から5人体制がスタートします。
この年も楽曲の半数以上で一人称の消失が発生しています。
また、一見すると「俺」と「僕」が競っていますが3曲中2曲はRap詞によって一人称が決定しています。
- 2011年
デビュー5周年にあたるこの年、アルバムのリリースはありませんでした。
東日本大震災の影響により、コンビナートを背景にした野外ライブ&五大ドームツアー計画が丸ごと中止に。
震災後のMステではカップリングの『PERFECT』を披露。また、KAT-TUNはこの年の6月へ福島に赴き、ラジオ番組の公開収録で『SMILE』と『勇気の花』を歌いました。『RUN FOR YOU』の歌詞には「頑張れ日本」の縦読みが隠れています。
アルバムが出なかった代わりにシングルを4枚リリースしているので総数に大きな変動はありませんでした。俺系楽曲は4曲、その内の3曲はRap詞によって決定しています。前年度の傾向を引き継ぐ形に。
Rap詞は田中くんが自ら書いていたので、つまりこの2年間でKAT-TUNに提供される俺系楽曲は明らかに減少傾向にあると言えます。
- 2012年
6thアルバム通常盤の隠しトラックとして収録されている『CHAIN OF LOVE』は正式歌詞が文字化されていないのでノーカウント。
『TO THE LIMIT』のスペシャル盤(J Storm公式サイトで限定販売)に収録された『CHAIN』は、歌ネットに掲載されていませんが歌詞カードが存在するのでカウントしました。ちなみにKAT-TUNが作詞を手掛けています。
※4「僕の心を写して」から『あの日のように』は僕系楽曲としたいところですが「(Rap詞)俺の両腕の間のMY LADY」があるので一人称混同楽曲となり除外。
この年にはじめて僕系楽曲が5曲を越えます。
- 2013年
『BOUNCE GIRL』はデジタル限定配信で正式な歌詞が文字化されていないためノーカウント。お願いだからどこかのタイミングでCDに収録して欲しい。
『楔 -kusabi-』から現在の4人体制がスタート。ご覧下さい。ミニアルバムが真っ青です。
- 2014年
カムヒアツアーがまだまだ記憶に新しい2014年。とうとう俺系楽曲が姿を消しました。つまりKAT-TUNは『FACE to Face』以降、もっと言うならば4人体制になってからはまだ一度も「俺」と歌っていないことになります。
いやぁ~しかし、一人称ひとつに絞って探っていくだけでもここまで楽曲の色が見えてくるものなのかとしみじみ思うばかりです。
3.折れ線グラフにしてみる
というわけでまとめるとこんな感じになりました。
2006~2007年はデビュー前の楽曲も含んでいますが全体的に俺系寄り、そのピークを2008年に迎えます。2009年はその流れの真逆を突くように0%へ持って行く様はまるでジェットコースターのようですね。
注意して見なければならないのは2010年と2011年です。
6人・5人体制時代のKAT-TUNにおいて、Rap詞は楽曲の色を決める重要な役割を担っていました。Rapが入ると一気にKAT-TUNらしくなる。Rapが入っていないとなんだか物足りない。そんな風に感じていたファンは多かったように感じます。
薄々お気づきかとは思いますが、ピンク色でラベリングした、Rap詞由来で一人称を『俺』と確定させた曲、そして僕系楽曲でありながらRap詞が加わることで一人称混合曲とした※印の楽曲を見直し、Rap詞を除いて楽曲の一人称を調べてみると2010年・2011年のところで明らかなズレが生じました。もしかしたらこの時期意識的に「俺」を加えることで楽曲の性格を結びつける意図があったりしたのでしょうか…真相は謎のままです。
僕系楽曲についてはデビューして数年は多くて年に4曲。「僕」が目立ち始めるのは2012年、特にCHAINツアー以降です。
『TO THE LIMIT』『不滅のスクラム』のカップリング辺りから徐々に青く染まっていき、翌年の『楔-kusabi-』で一気に数が伸びた模様です。
よって調査結果をまとめますと、KAT-TUNの楽曲における一人称は2009年を境に俺系楽曲が減少・維持を経てフェードアウトしたのに対し、僕系楽曲はここ3年間で一気に増加していることが読み取れます。
4.調査を終えて
1年ごとの総数が15曲前後なので1曲でグラフを大きく左右することになりますが、なかなか興味深い結果になったのではないかと思います。
個人的には追っていて「自分」や「誰」もカウントしたかったな…と反省。しかし2009年に発生した一人称の消失は一体何だったのだろうと新たに面白そうなテーマを見つけられたのは大きな収穫でした。
当たり前ですが一人称が僕の曲が増えたからと言って、KAT-TUNらしくなくなったと言いたいわけではありません。むしろ私は今現在のKAT-TUNが背負うKAT-TUNらしさとは一体何であるのかを探りたいのです。
日々変化を遂げ、己の武器を磨き魅力を引き出すKAT-TUNをどうにか言語化したい。KAT-TUNが目指す「KAT-TUN」とは何か。自らのイメージと向き合い戦い続ける彼らの深層を探る上で、拙記事が一つの材料になれば幸いです。
画像盛り盛りの重たい記事になってしまいましたが、最後までご拝読頂きありがとうございました!
*1:ただしジャケ写、てめーはダメだ。